霊・UFO・前世などの体験

不思議な人生の記録

霊道となる部屋

ある晴れた日、友達の部屋に泊まりに行くことになった。

 

そのアパートは沖縄北部にあり、ホテル従業員の寮としても一部使われていて、ここも怪奇現象や霊の目撃が多い場所だった。

 

その為、友達から「私は何も見たことないけど、目撃者が多いのが気持ち悪いから、見に来てほしい」と頼まれたのだった。

 

アパートの外観は古く、コンクリートは所々がひび割れている。

 

狭いエレベーターに乗り込み、友達の部屋があるフロアで下りた。

 

誰かに見られている気配、しかも大人数。

 

外は快晴なのに、アパート内は、なんだか薄暗く肌寒かった。

 

友達の部屋の前に着くと、その両隣の部屋からも歓迎してくれる声が聴こえる。

 

声のする方を見てみると、同じ宿泊部の女友達が数人いて「ここに住んでいる」と言う。

 

その夜は一つの部屋に集まり、飲んで騒いで、女子会を楽しんだ。

 

夜中になっても特に異常はなく、皆それぞれの部屋へと戻り、私も友達のリビングで眠りについた。

 

早朝、友達が仕事に行く為、身支度を始める。

 

その物音で目が覚めたものの、友達とは昼頃にホテルで会い、部屋の鍵を返すという約束もすでにしていたから、私は再び眠りについた。

 

しばらくして、部屋のインターフォンが鳴った。

 

ピンポン ピンポン ピンポン

 

音で目覚めた私に友達が言った。

 

「この部屋のインターフォン壊れてるみたいで、よく鳴るの。気にしないで寝てて。

それじゃ、ホテルでね。」

 

彼女は、部屋を出て行った。

 

その直後、またインターフォンが鳴った。

 

ピンポン ピンポン ピンポン

 

すると突然、私の身体が金縛りになった。

 

リビングにいた私からは、玄関の様子がよく見えた。

 

ピンポン ピンポン ピンポン

 

インターフォンの音とともに玄関のドアをすり抜けて、ランドセルを背負った小学生の男の子が部屋に入って来た。

 

ピンポン ピンポン ピンポン

 

次は、シワだらけの小柄なおばあさんが入ってくる。

 

その後もインターフォンの音は鳴り続け、老若男女の霊が次々と入って来て、リビングを通り、突き当たりの壁や窓のあたりから外へと出て行った。

 

この部屋が霊道となる時、その異空間の現象によって鳴るのか、それとも霊が律儀に鳴らして部屋に入ってくるのかは不明だったが、インターフォンが壊れているのではなかった。

 

やがて静かになり、金縛りが解けた。

 

初めての霊道体験で、すっかり眠気は吹き飛び、興奮と疲れと昨夜のお酒が残っていた。

 

シャワーを浴びてスッキリしたい、と思い浴室へ。

 

沖縄では、お風呂に浸かる習慣がないから、浴槽が無いアパートも多い。

 

ここも、タイル張りにシャワーが付いているだけのものだった。

 

熱いお湯を頭から被っていると、後ろのドアから気配を感じた。

 

コンコン

 

ドアをたたく音。

 

明らかに人ではなく、霊の気配だ。

 

まだ部屋を通る霊がいたのか!?

 

お湯を止め、動きを止め、耳を澄ます。

 

「目では見えない世界」を見る方では、ドアが透けて、その前に立っている若い男性霊の姿が見えた。

 

ドアを開けようとしているのが、私に伝わってくる。

 

時々、性への執着が手放せず、この世に留まっている霊と出会うことがある。

 

そんな霊は、「色情霊(しきじょうれい)」と呼ばれる。

 

どの色情霊も欲望むき出しで、自分の快楽を得ることだけを考えているから、出会うと質が悪い。

 

しかし、ドアの前に立っている男性霊からは、そんなギラギラした欲望が伝わってこなかった。

 

どちらかと言えば、奥手で女性経験があまりなさそうなタイプ。

 

性には興味があって立ち止まったけど、浴室の中に入ってくる度胸がない印象。

 

「私の声が聞こえますか?こんな所で立ち止まってはダメです。

あなたの行くべき場所へ行ってください。」

 

私は彼に数回、呼びかけた。

 

やっと彼が動き、リビングへと歩き出す。

 

そして、部屋から出て行った。

 

素直な霊で、運が良かったと思う。

 

浴室の中の私は、すっかり身体が冷え、またシャワーを浴びなおした。

 

友達に何と伝えれば良いのか、を考えながら。

 

私が何も伝えず、インターフォンの故障だと思い込んだまま住み続けた場合、彼女の身体が心配になった。

 

霊道は、たくさんの霊が通るから、その影響を受けて体調不良になる可能性が大きい。

 

しかし正直に、今までインターフォンが鳴っていたのは、部屋が霊道となって霊が通っていたからだと伝えたら、彼女はとても怖がるのではないか。

 

重い気分を抱えながら身支度をして、ホテルへと向かった。

 

結局、私は体験したこと全てを彼女に話し、「部屋を変えてもらう方が良い」と伝えた。

 

私の想像と違って、彼女は、あっけらかんとしていた。

 

インターフォン、よく鳴っていたけど、故障でも風のせいでもなかったんだ。霊が見えない体質で良かったー!!」と。

 

そして後日、彼女は部屋を変わった。

 

しばらくして、他の女性従業員も新しくできた寮へと引っ越しをした。

 

あの日以降、私はアパートを訪れていないが、現在も、まだ建っているようだ。

 

今日もまた霊道が開いているかもしれない、インターフォンの音とともに。

 

 

 

 

沖縄そばが好きで、よく食べに行ったし、冷蔵庫にも買い置きをしていた。

 

特にプルプルした軟骨のソーキよりも、皮・赤身・脂身のある三枚肉の方が、好き。

 

 食べ始めは、コクのあるカツオだしを味わって、途中から唐辛子を泡盛に付け込んだコーレーグースを入れて、味に変化をつけるのも良い。