数日前のこと。
「富士山の夢を見た」と伝えたら、
「縁起が良いから、宝くじ買ったら当たるんじゃない?」と家族や友達から言われた。
しかし夢の内容を語っていくうちに、それが縁起の良いものではないことに驚きや戸惑いの反応へと変わっていった。
朝方、もう起きないと、と思いながらも起きられずにいた私。
そんな時に見た夢だった。
大きな窓ガラスがあり、そこからは雲一つない青空を背景に、雪の積もった富士山の山頂部が綺麗に見えていた。
夢の中で、ここは自分の部屋だ、と思っている私。
だが、その部屋には家具などが一切なく、大きな窓ガラスからは眩しいほどの陽光が入ってきていた。
そして、目の前にある富士山の雪も、光に反射をしてキラキラと輝いていた。
あまりの美しさに眺めていると、私の母と叔母が部屋に入ってきた。
「この場所から、こんなに綺麗に富士山が見えるようになったんだ。
今まで建物が多くて、うちの家からでは全然見えなかったからね」と叔母が言った。
その言葉に違和感を覚えた私は、もう一度、窓の外を観察した。
富士山を見下ろすと、その周りには何もなかった。
建物も緑豊かだった自然も、何もかも無い状態で、瓦礫(がれき)の平野だけがあった。
青空と雪の富士山との光輝く色合いに反して、どこまでも続く灰色の瓦礫を見て言葉を失った。
地震で建物が無くなったんだろうか。
鈍った思考ながらも、なんとか原因を見つけだそうとして、ふと富士山の山頂部へと目がいった。
あれ!? さっきと様子が違う?
何かが違うように感じるのに、どこが変化しているのかがわからず、ずっと観察を続ける私。
しばらくして、やっと頂上から白い煙が出ていることに気づいた。
先ほどまでは、青空に向かって山頂部の雪が風で舞い上がっていたのだが、今は細く白い煙がたなびいている。
その煙の量が、だんだんと増していく。
噴火の前ぶれか!?、と思いながら目が覚めた。
あまりにも現実味のある夢で、激しい鼓動がおさまらなかった。
私は富士山を見たことが、数えるほどしかない。
しかもそれらは移動の新幹線の中だったり、東京から見える小さな富士山だったりと、遠目からしか見たことがない。
静岡県に数回旅行に行ったこともあるが、春夏の時期で天気が悪く、全然見えなかった。
それに、富士登山もしたことがない。
だから実際には、山頂部を間近で見たことがないのだ。
そんな私が富士山頂部の鮮明な夢を見たことが、不思議に思えた。
落ち着いてゆっくりと夢の内容を思い出してみると、奇妙なところもあった。
目の前に富士山の山頂部が見える部屋がある建物って、普通で考えたらありえない。
富士山の標高は、3,776メートル。
窓から山頂部を見ようとするなら、飛行機やヘリコプターのような乗り物に乗っていないと見られない。
しかも、その乗り物は、音も無く静止をしていないといけない。
山頂部と並ぶ高さにあるその窓からは、見下ろすと、富士山周辺の様子もはっきりと見えた。
宇宙船にでも乗っていたのだろうか。
地球上の乗り物では、見られない景色だった。
夢の中の街は広範囲で破壊されており、瓦礫となっていた。
あれは、富士山噴火と地震によるものだったのだろうか。
富士山の噴火に関して、実際には、いつ起こっても不思議ではないと言われている。
すでに、300年以上も噴火をしていないとも聞いたことがある。
噴火後、その火山灰は、西から東へと吹く偏西風によって運ばれ、関東に大きな被害を与えることも予測がされている。
人々を魅了する、神秘的な美しさをもつ富士山。
日本を壊滅状態にさせる、危険性の高い富士山。
それら二面性を現した今回の夢は、『ただの夢』と言えないほど、ゾッとさせるものがあり、いつまでも脳裏に映像が焼きついている。
近い未来、現実には起こらないよう願うものの、情報として夢の記憶をここにも残しておく。