霊・UFO・前世などの体験

不思議な人生の記録

あばれまわる黒龍

まだ本格的な夏にもなっていないのに、連日の蒸し暑さで、すでに体力が消耗している。

 

湿度の高い、梅雨の時期が苦手だ。

 

普段、ゆっくり寝たいと思いながらも、忙しさもあって気がせいて、平日・休日に関係なく、朝6時には起きている。

 

だが、うだるような暑さによって、少しずつ身体の不調が出始めた為、明日8時間は寝るぞ、と決めてベッドについた。

 

ふと目が覚めると、朝5時55分。

 

いつもなら、アラームが鳴る時間だ。

 

身体に6時起きというのが刷り込まれているのか、アラームが無くても自然と目覚めてしまった。

 

いやいや、今日は最低でも8時間は寝る!

 

自分に言い聞かせて、改めて横になる。

 

夜中から降り続いている雨の音も、今は心地よく聴こえる。

 

寝不足の身体は重く、すぐに眠気が襲ってきた。

 

気づくと、どこかの木造住宅の玄関にいた。

 

突風が家を揺らし、激しい雨が屋根や壁に打ちつける音がする。

 

これは明晰夢(めいせきむ)だな、と思っているのに、妙に胸がざわつき、不安にさせる風と雨音だった。

 

玄関の木の引き戸を開けてみる。

 

一瞬にして、ずぶ濡れ状態となったが、目の前の茶色く濁った川の流れと轟音とがすさまじく、自分の身なりなんて構っていられなかった。

 

水嵩が増し濁流となって、今にも辺り一帯、すべてを飲み込んでしまいそうだった。

 

バケツをひっくり返したような大雨と川の轟音、そして時々、木々などを巻き上げながら突風が打ちつける様子に、恐怖で足がすくんだ。

 

川から離れて逃げないと、と思うものの、どこに逃げていいのかもわからず、玄関へと戻り、引き戸を閉めるだけで精一杯だった。

 

木造住宅には誰もおらず、辺りの様子もわからず、私は呆然と玄関に立っていた。

 

突然、空気が変わったような気がした。

 

外に何かがいるような気配がして、引き戸を少し開けてみる。

 

突風と豪雨によって視界が悪かったものの、目を凝らして見渡した。

 

すると、雨雲の下を翔る黒龍がいた。

 

その姿に惹かれ、よく見ようとして、自然と足が川の方へと進んでいた。

 

すると川の水が溢れだし、あっという間に私自身も家も、なにもかも飲み込まれていった。

 

しかし苦しさもないまま、気づくと私は豪雨の中を風のように、ものすごい勢いで進んでいた。

 

眼下には、山脈や川があり、パッチワークのように見える田んぼや畑が広がっており、たくさんの家が並んでいた。

 

私は黒龍と一体化していて、黒龍の眼を通して、私も景色を見ているのだった。

 

そこに恐怖は微塵もなく、空を翔る心地よさがあった。

 

一体化に慣れてくると、黒龍の想いのようなものが私に伝わってきた。

 

それは、環境破壊をし続ける人間に対する怒りと生きることの苦しさや悲しみを抱える人間への憐みのような想いだった。

 

黒龍が縦横無尽に空中を移動し、時々、山肌に身体の一部をあてることで、その部分が崩れて土石流が発生した。

 

また、川面すれすれを飛ぶことで、川の水が氾濫していった。

 

瞬く間に、家や畑などが茶色い土や水に染まっていく範囲が広がっていく。

 

縦横無尽に翔る黒龍によって突風が吹き、豪雨を降らせ、災害と呼ばれる現象になっているのだった。

 

8時25分のアラームが鳴って、目が覚めた。

 

8時間以上、ベッドの上で横になっていたものの、夢によって頭はボーっとした状態で、いつにも増して疲労感が残っていた。

 

長雨と数日前に起こった静岡県熱海市の土砂災害のニュースを見たから、このような夢を見たのだろうか。

 

それにしても現実味のある黒龍の姿と想いとが、いつまでも余韻として残っている。

 

人類は快適な生活を求めるが故に、森林を伐採し、石油や温泉を掘り続け、空気・水・土をも汚染し、自分達の住む地球の環境破壊を行っている。

 

自分で、自分の首を絞めているような状態なのだ。

 

災害には多くの命を奪う残酷な部分があるが、生きている者たちの人生観を変えるという大きな役割もある。

 

黒龍によって創り出された災害の夢は、環境破壊を続ける人類への警告のように思えてならない。